研究トピックス:地球進化

 ・太古代の地球大気

地球は約 46 億年前に誕生しました。しかし地球の歴史の前半部分、つまり太古代以前(25 億年前より昔)の地球について、実はほとんど何も分かっていません。大気の化学組成はどのようだったのか? 海はどんな組成でどんな生命で溢れていたのか? 一般的に大気中の酸素濃度は、約 24-22 億年前に上昇したと考えられています。したがって、太古代には現在のような酸化的環境下での温暖維持機構や物質循環とは、大きく異なっていたメカニズムで地球表層環境が維持されていた可能性があります。特に、太古代の地球のような酸素に乏しい大気では、メタンから生成する有機物エアロゾルの役割が重要になります。太古代の地球や還元型大気をもつ惑星の大気化学と温室効果に焦点をあてて、室内実験および数値モデリングにより地表環境進化や気候の安定性について研究を進めています。

 ・全球凍結と大酸化イベント

太古代から原生代に入る約 24-22 億年前、地球は表面すべてが氷で覆われる"全球凍結"もふくむ氷河時代を経験しました。全球凍結に陥った場合、海氷の厚さは1キロに達し地表気温はマイナス 50 ℃という極限状態になると予想されます。どうして地球は全球凍結に陥り、どのように回復し、生命はどうやってこの状況を生き延びたのか? 今わかっていることは、氷河期後に光合成生物が大繁栄し酸素大気が出現したということです。これらの事件はどう結びついているのか? また太古代の気候維持システムはどうして破たんしてしまったのか? 野外調査や岩石試料の化学分析を行い、なぜ地球大気に酸素が出現することになったのか、謎解きをしています。

 ・隕石衝突と環境変動


太陽系の天体は、形成以来数限りない隕石衝突を受けてきました。衝突は惑星に何をもたらし何を奪ったのか? 惑星表面の大気や水、生命前駆分子でさえ衝突によりもたらされる可能性があります。その一方、隕石衝突は6500万年前には恐竜をはじめとする生物の大量絶滅も引き起こし、火星の大気を吹き飛ばしたとも言われています。高エネルギーレーザー銃を使い、隕石高速衝突に伴う化学反応を再現する実験を行うとともに、フィールド調査・試料分析により複合的に隕石衝突の役割を調べています。

 ・近過去の気候環境変動と人類史への影響

地球システムの構造を把握するためには、近過去に起きていた氷期ー間氷期サイクルに代表される周期的気候変動の理解も重要となります。特に、このような近過去の気候変動は、人類の地球上での拡散や文化圏の構築に多大な影響を与えてきました。近過去の古気候復元を目的とし、インドに存在するロナクレーター内の固定堆積物の掘削調査を計画しています。アジア地域の気候に対して、インドモンスーンは大きな役割を果たしていますが、これまで陸上における数万年以上の連続記録はありません。ロナクレーターの堆積物の解析をすることで、アジア気候変動の理解や人類史への環境地理的影響の評価、また将来予測に向けた全球気候モデルの構築に貢献することを目指します。


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